Il Regalo × outBespoken Collaboration
Oct 30, 2025
日本の美意識が今もなお息づく京都。白い漆喰壁と深い茶色の杉板壁が織りなす町屋の風景は、古都ならではの静かな趣を感じさせます。
その歴史的な街並みを背景に、ノルウェー出身のSando | outBespoken が、クラシックなスーツスタイルをInstagramを中心に発信しています。
彼のスタイルには、インスピレーションを受ける要素がたくさんあります。クラシックでありながら、彼自身の個性がしっかりと感じられる。
色の選び方、素材の組み合わせ、アクセサリーの取り入れ方、その一つひとつに、彼の美意識が自然に息づいています。
シャツやタイ、ポケットチーフ、ソックス、靴などの組み合わせも、決して「無難」ではなく、少しだけ意外性を感じさせる。その“外し”のセンスには、どこか着物の着こなしに通じる「粋」を感じずにはいられません。
洗練されていながら遊び心がある。そんな彼のスタイルと、靴下をコーディネートの一部として自己表現のアクセサリーと捉える私たちの思いが共鳴し、今回のコラボレーションが生まれました。
では、私たちのコラボレーションによる4つのソックスをご紹介します。
(写真とコーディネートはすべてoutBespokenによるものです。)
ヘリンボーンロングホーズ
バーガンディをベースに、少しくすんだピンクを合わせたヘリンボーンソックス。一見個性的な配色ですが、強めの色のネクタイやポケットチーフと合わせると、全体が自然にまとまります。ブラウンのスーツとバーガンディのタッセルローファーをつなぐ、遊び心のある一本です。 ソックスは足を組んだ時などにさりげなく見えるアイテム。少し冒険をしてみるのに、ちょうど良いアクセサリーだと思います。
足を組んだ時に見えるソックスは重要なアクセサリーです。
ブラウンスーツにピンクのアクセント。タイやポケットチーフとバランスをとると思いもよらない新鮮な効果があります。
ポケットチーフの色の一部のピンクがソックスと共鳴します。
スノーペイズリーロングホーズ
私自身も思い入れのあるペイズリーソックス。数年前に発表したデザインですが、これまでにいくつかのカラーバリエーションを展開してきました。その中でも、“SNOW”と名付けた雪のように柔らかな白をベースにした配色は特別です。
ベースの白はそのままに、outBespoken らしいピンク、ベージュ、バーガンディでペイズリーを表現しました。
最初に彼のアイディアを聞いたとき、正直「ベースが白で、そこにピンクを?」とメンズのアクセサリーにしてはかなり大胆、と驚きましたが、仕上がったソックスは上品で温かく、特別な雰囲気を持っています。
マットな質感の “SNOW” (オフホワイト)に優しいピンクのアクセントカラーが特別な雰囲気を醸し出します。
胸にさすとほんの少ししか見えないポケットチーフ。それでも大切なディテールです。
上質なウール素材のダブルのスーツには同じく上質なウールソックスを合わせたいもの。
ヘリテージダマスクロングホーズ
この柄をデザインしたときのことを今でもよく覚えています。明確なイメージがあった一方で、それを履き心地の良いソックスとして形にするのは簡単ではありませんでした。デザイン性だけでなく、伸縮性や快適さを兼ね備えるために、何度も試作を重ねました。 その甲斐あって、今では秋冬の定番となったヘリテージダマスクソックスを、今回はoutBespokenを象徴する深いブラウンで表現。彼の得意とするブラウンの着こなしに寄り添う一足です。
ブラウントーンでまとめたコーディネート。微妙な濃淡が美しい。
優しいベージュトーンのハンドトゥースジャケット。カシミアならではの素材感が全体の印象を引き上げます。
ベージュからダークブラウンのワントーンコーディネート。京都の街並みにしっとりと馴染みます。
ハウンドトゥースロングホーズ
outBespoken が理想とするハウンドトゥースのイメージに近づけるため、柄のスケールをやや大きめに設定しました。ハウンドトゥースはメンズソックスでは定番のパターンですが、私たちは独自の方向性を探りました。 通常は綿素材で作られることが多いこの柄を、あえてウールで表現したのは大正解でした。ウール特有の柔らかな質感と奥行きのある色合いが相まって、秋冬のワードローブで活躍する一足に仕上がっています。ブラウン系だけでなくグレー系のスーツにもよく合う、汎用性の高いソックスです。
ほんの少し大きめのハウンドトゥースパターンが、上品なカジュアル感を演出します。
ブレイシス(サスペンダー)も隠れたオシャレのアイテムです。
ブルー系のアクセサリーがブラウンとグレーの着こなしの橋渡しをしています。
アクセサリーの役割
最後に
outBespoken はInstagramの投稿の中で、ネクタイ、ポケットチーフ、サスペンダー、ソックスといったアクセサリーを並べた写真を定期的に掲載しています。
これらの写真は私にとってとても興味深いものです。着こなし全体の写真ももちろん素敵ですが、こうしてディテールだけを切り取ることで、アクセサリーがスタイル全体に果たす役割がより明確になります。
小さなディテールが変われば、全体の印象もまったく異なる。その積み重ねこそが、装いの楽しさであり、コーディネートのアイディアを広げてくれるのだと思います。
コントラストのある強い配色ながら、色相を揃えることで全体の統一感が生まれます。
ピンクからコーラルの色相にまとめたアイディア。ポケットチーフとソックスの柔らかなオフホワイトのベースカラーが明るめのスーツのカラーを引き立てます。
しっとりとした冬の雰囲気を持つ美しいブラウントーン。ウールの素材感が生きています。
ブルー系の中のブラウン。ほぼ補色の関係にあるこの2色はお互いの色をより美しく引き立て合います。
このコラボレーションには、洗練と遊び心を大切にする私たちの共通の思いが込められています。これらの靴下が、日々の装いに小さな自信と楽しさを添える存在になれば嬉しく思います。
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筆者:Il Regalo デザイナー |
バルデサーリ岡部純子
多摩美術大学テキスタイルデザイン学科を卒業後、大手アパレル会社で9年間企業デザイナーとして勤務。その後独立し、靴下をはじめとするニットウェアのデザインを手がける。
2016年より Il Regalo のデザイナーとして活動。
夫の母国であるイタリアの美的遺産にインスパイアされたデザインと、日本の精緻なものづくりを融合させ、独自の靴下づくりを追求している。